猫のいる家

どんな相手にも無償の愛を与えられるような人

猫のいる家
うちには、クロちゃんという猫がいる。
クロちゃんがうちに来る前から、うちには他にも猫たちがいて、近所の人に保護されうちに連れてこられた。
やってきたクロちゃんは、ほかの猫がごはんを食べようとすると必ずと言っていいほど横取りし、人間のひざの上に乗るのも、一応順番待ちをするのが暗黙のルールになっているにもかかわらず順番を守らず、意味もなく他の猫の後を付いて回って相手をイライラさせ、多頭飼いには全く向いていないタイプだった。
猫たちの間でも、あまり評判の良くないクロちゃんだったが、人間にとってもクロちゃんの行動が悩みのタネになっている。
まず、トイレで用を足さず、部屋中どこでもおしっこをするので、おしっこをするたびに拭いて回らなければならない。
少し毛の長い猫で、本人のおしりまわりの毛がなぜかおしっこでびしょびしょになるので、定期的にシャワーで洗わなければならない。
野良猫暮らしの頃の飢えていた記憶が抜けないのか食べ物に対する執着が激しく、人間の食べ物も欲しがり、食卓のテーブルからなかなか降りようとしないので、食事のたびに面倒なことになる。
一度、食卓にアジの骨が皿に残っていたとき、いきなりテーブルに飛び乗ったかと思ったら、太さが1㎝ぐらい長さが15㎝ぐらいある硬い中骨を、ほとんど噛まずに一瞬で飲み込んでしまったことがあった。
このサイズだと食べないだろうと気を抜いていたので、まさか一瞬で飲み込んでしまうとは…!と思った瞬間、クロちゃんの動きが一瞬ピタっと止まり、どうしたのか!?と心配していたら、一瞬で食べた中骨を皿の上に吐き出した。硬い骨で喉を傷つけたのであろう、少し血が混じっていた。「そうだろうな…いくらなんでも丸呑みは無理だよ…クロちゃん。」と、心配するやら、あきれるやら、なんとも言いがたい気持ちになった。
それ以来、どんなに食べにくそうな物でも、クロちゃんを近づけないようにしている。特にフライドチキンなどは要注意だ。きっと、口の中や喉が傷つくのもおかまいなしに、バリバリとかぶりつくに違いない。
このクロちゃんの世話がなかったら、どんなに楽だろう…と考えることもある。
そう思うと同時に、こんなに世話を焼かせるクロちゃんを愛せるほどの、情の深さや包容力が自分にはないような気もしていて、クロちゃんにとっては、最初に拾ってくれた人に飼われていた方が幸せだったんじゃないのかなぁ…とも思う。その人はもともと看護師をしていて、とても情の深い、それこそどんな相手にも無償の愛を与えられるような人だった。
クロちゃんがうちに連れてこられたときに、クロちゃんと縁があったのはあなたですからあなたが飼うべきなんですよ、と言えばクロちゃんにとっても良かったんじゃないかと、今でも思うことがある。
でも、もうあとの祭りなので、こうやってクロちゃんと出会ったことにも何か意味のあることなんだろう、今はわからないけど…と思いながら毎日過ごしている。